「一流企業」

 はてなのトップページにあがっていた『新卒で入社したホンダをたった3年で退職しました』という記事が面白かった。

 コメント欄も見ると、どうやら日本の一流自動車メーカーというのは、上流工程のみを担当する「企画会社」であり、自社自体には技術を持っていない「技術商社」であるらしい。

 そういう空洞化が産業全体や企業にとって良いことなのか悪いことなのかはわからないが、筆者は「パワポの紙芝居とサプライヤーの日程管理・問い合わせを定年まで延々と続けなければいけない絶望感に襲われ」、日本でも有数の高待遇を捨ててまで、「魂の技術開発ができる場所で生きる」と腹を括ったらしい。

 

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 「ホンダ」という一流企業の名前が「うらやましい」と素直に思う。

 僕も「~(一流企業)を辞めて、~になった理由 」とか書いてみたい。

 

 就職活動をしていたとき、僕は「小汚くて頭の悪い惨めな学生」だった。

 周りに情報交換をしながら一緒に就職活動ができるような友達はいなかったし、「俺なんかがキラキラした一流企業に入って働くことができわけがない」と思っていた。

 おまけに、「お金」の意味も価値もよくわかっていなかったから、「なんでみんな有名な企業に行きたいと思うんだ?」とくらいに思っていたし、そういう企業に内定をもらった友達を見て、「結構大したことのないやつが入れるもんなんだな」と本気で思うくらい、頭が悪かった。

 

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 残念ながら、20代後半になった今でも、基本形は変わっていない。

 

 相変わらず、いちいち売り場の商品を手にとって感触を確かめながら考えるような、頭の悪い「20代後半」になっただけだ。

 

 そして、「一流企業」に勤める人を目の前にすると、その後光をさしたような自信満々な様子に、「頭が悪くてすみません」と言いたくなるような感じで恐縮してしまうけど、一方で「じゃあ、『一流企業』ってなんなんだ?」とも思っている。

 

 そんな風に今でも頭が悪い僕は、結局、「一流企業」なんて、誰にとってもわかりやすいただの言葉でしかなく、「入った!」「辞めた!」「働いてるんだぜ!」と言ってちょっと気持ちが良くなったり相手を恐縮させるだけの、ただの言葉であって、「一流企業」であるかどうかに関わらず、そこで働いている当人が満足しているかどうかという、わかりづらくて説明のめんどくさいことが、やっぱり大事なのだと思う。

 

 おしまい