そろそろ「自信」を持ち始めていいんじゃないかと思った。

 昔から自信がない。高校生のときは、サッカーの練習試合で審判を任せられれば、ルールがイマイチよくわかってなかったせいか、常に「間違ってるんじゃないか」と怯えながら旗を上げていたし、働き始めてからは簡単な在庫数を数えるだけの作業も、先輩が数えたのと違えば「自分の方が間違ってるんじゃないか」と思い、メモ用紙を同期に「間違ってるかも」と言って渡し、彼に「もうちょっと自信持った方がいいよ」と言われた。

 今でも、始めたばかりの仕事は作業が遅く、慣れれば「30分で終わる」らしい作業に2時間近く時間をかけるし、この文章を書いているたった今も、夢中になりすぎて乗り換えの駅で降りそびれてしまったくらい、相変わらず間抜けだ。

 そんな僕も、そろそろ自信を持ち始めてもいいんじゃないかと思った。
 「自信がない」のは「何でも完璧にやらなければならない」と考えることで、誰かに「できなかった」ことについて責められることを事前に予防し、自分を守ろうとする「心の癖」なのだと思う。
 だけど、もっと、自分が得意なこととか、積み上げている価値に目を向けて、あとのことは、「誰かに頼る」つもりで程々にやってればいいのではないかと思ったのだ。

 河合隼雄さんは村上春樹さんとの対談(『村上春樹河合隼雄に会いに行く』)で、「(「自立」を過剰に求める相談者に対して)あなたがしようとしているのは自立ではなくて『孤立』なんです」「他者に依存することも大事なんです」といった主旨のことを言っていた。

 もしかしたら「自信」なんて、「お昼休みを時間通りに切り上げて会社に戻っている」というだけで持ってもいいくらい、考え方次第のことなのかもしれない。

 おしまい