電車通勤に慣れてしまった

 再就職して働き始めた頃、通勤が嫌いだった。
 中学・高校は電車を使って通学していたけど、大学と新卒で就職した前の会社は自転車で通っていた。特に、結婚して新居を選ぶときはあえて自転車通勤できる範囲に家を探したくらいで、僕は通勤にかける時間を「もったいない」と思うタイプの人間だった。

 いろんな理由があって、僕は再就職したのとほぼ同じタイミングでいま住んでいる家に引っ越した。働き始めた当初、僕は家に帰る度に「遠い」と妻に愚痴を言い、取引先の外国人にもっともらしく「日本の満員電車はクレイジーだ!」と言いながら、慣れない満員電車に押しつぶされて通勤した。

 それから4ヶ月くらいが経って、時間をずらすとかできるだけ奥に入るなどの試行錯誤をこらした結果、僕は電車通勤に慣れてしまった。
 乗っている間も、フルワイヤレスイヤホンでBBCのラジオを聴いたり、スマホでなんらかの日常的なタスクをこなしたりして、できるだけじぶんが満足するように時間を使うことができている。
 
 それは「やっぱり通勤にかける時間は少なければ少ないほど良い」と考える僕にとって、一時的な対応策でしかないはずだが、通勤というほとんど毎日の習慣というのは元々じぶんがそれに対してどう思っていたかを忘れさせるほどの力があるのだと思う。

 おしまい