やりたいことは全部やってしまえばいい

 ほんの少し前まで硬派を気取っていた。

 中学入学したてのとき、授業中誰かが下ネタを言うと、僕と当時仲が良かった丸縁メガネのS君と「それないわぁー」みたいな顔をしていた。

 勿論学年を追うに従って当たり前のように教室中に溢れていった下ネタに対して僕はいつからか優等生気取りするのを止めてしまったが、それでも、僕は自分から下ネタをするタイプではなかった。

 

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 恋をする相手も魂を捧げるなにかも、ひとつでなければならないと、いつからか思っていた。

 でも、もしかしたら、人は色んな距離から色んな人に対して恋心に似たようなあこがれを抱いてもいいし、最近では、「やりたい」と思ったことを全部やろうとした方が、「いやいや、私には魂を捧げた相手がいますから」と言ってやることを一つに絞ったときより、「楽しい」ことに気がついた。

 

 しかも、不思議なことに「楽しい」と、「もっとやりたい」「あれもやりたい」と力が湧いてきて、「どうにか今の生活の中であれをもっとできないだろうか」と試行錯誤するようになる。

 

 本当に硬派でかっこいい人もたくさんいるのかもしれない。

 でも、僕自身は「恥ずかしい」という理由で硬派のふりをしていた、軟派な人間だったのだと、最近になってちょっと認められるようになってきた。